「ヤズディ教徒もシーア派も殺されていい」
武装組織イスラム国(IS)の元戦闘員とのインタビューの第2回。今年初め、戦闘員だったモハメッド・イブラヒム(30)はクルド・ペシュメルガ部隊に拘束され、現在はイラク・クルディスタン地域の拘置施設に収容されている。分隊長として部下を持つ地位にあった彼は、いまもISを強く信奉していた。イラク第2の大都市モスルが昨年、ISによって制圧された際、自らIS入隊を志願し、戦闘員となった。
ISは昨年8月、モスルの西約100キロのシンジャル一帯でヤズディ教徒(ヤジディ教徒)を一斉に襲撃。(2014ヤズディ襲撃事件)イスラム教徒に改宗しない男性たちを殺害したうえ、おもに若い女性らを用意したバスで集団で連れ去った。女性は「奴隷」として強制結婚させられ、年齢によって数十~数百ドルで転売されていった。だがモハメッドは、ヤズディ教徒虐殺について、「しかたがないことだ。彼らはアッラーを信じぬ者だから」と話した。
私はこれまでヤズディ教徒を取材してきた。家族を殺されたり、拉致されレイプを繰り返され、命がけで脱出してきた女性たち。いくつもの悲劇を見てきただけに、同情ひとつ見せず「ヤズディは殺されてかまわない」と目の前で語る男に、複雑な思いを抱くばかりだった。もし国際社会が介入してIS支配が終わることになったとしても、この国の宗派や民族を引き裂いた傷は限りなく深い。
【取材:4月下旬・玉本英子】
◆IS支配地域に暮らす女性たち、どういう状況か?
モハメッド:IS地域に暮らす女性はいい状況にあると私は思う。ただ女性たちは外出時には全身を覆うヒジャーブをかぶらなければいけな い。イスラムの教えでは、そうしなければならない。自分の村の女たちはこれまでそういう生活をしてきたし、ISが統治を始めたから変わった、ということは ない。
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