この日の デモの先陣を切ってスタートしたのはサドル(民主主義と生活を守る有志)の若者たち。(大阪市靱公園で7月撮影・矢野宏 新聞うずみ火)
この日の デモの先陣を切ってスタートしたのはサドル(民主主義と生活を守る有志)の若者たち。(大阪市靱公園で7月撮影・矢野宏 新聞うずみ火)

 

◆大阪でも若者たちが抗議デモ
同じ頃、大阪市北区のJR大阪駅北側では、関西の学生らでつくる「シールズ関西」が別の若者グループ「SADL」(サドル=民主主義と生活を守る有志)と連携して抗議の声を上げた。

同世代の人たちが「おかしい」と声を上げてデモをしている姿に衝撃を受け、サドルに入った会社員の野島聡子さん(28)は、強行採決のニュースを 知った瞬間、「この国に民主主義はないと感じた」と振り返る。「政治の側も、市民の側も民主主義を大事にしなければいけないという意識が薄いと思っていま したが、今回の強行採決で明るみになり、悲しくなりました。主権者である私たちがもっと政治に関わらないと今の流れは止められません。諦めることなく訴え ていきたいと思います」

この日の緊急行動の主催者の一人、朴亜悠(パク・アユ)さん(22)は大学1年生。強行採決のニュースを授業中、スマホで知ったという。
「こんな大事なことが、反対する人の声を無視して強引なやり方で決まってしまうことが怖いと思いました。安倍政権は人の命を軽く見ていると思います。後方 支援というけれど、戦場へ行くことであり、自衛隊員は殺し殺されることになります。歴史を軽んじているから、過ちを過ちと思っていないから、また繰り返す のではないでしょうか」

他の学生の反応について尋ねると、「確かに無関心な学生が多いです。安保法案に対して反対と思っていても声を上げようとしない。ためらっている。私 たちは意見を押し付けるつもりはありません。せめて自分の国のことに興味を持てる人になってほしいから、その受け皿になれたらと思うのです」
午後7時半過ぎ、シールズ関西の街宣車の上で、学生たちがマイクを握った。

2011年3月11日の東京電力福島第一原発事故で福島県会津若松市から避難してきたという女子大生は、「今日は政治に首を突っ込みたくなという人に向けて話します」と語り始めた。
「私の日常は、福島第一原発が水素爆発するという、たった2日間の出来事で大きく変わりました。原発の危険性も放射能の恐ろしさも知っていましたが、別の 国の話だと思っていました。それが自分の身に降りかかってわかりました。いつでもどこでも誰にでも、最悪の事態は起こりうるのだ、と」

安保法案が成立すると自衛隊の活動範囲は広がる。隊員の命が危険にさらされるだけでなく、戦争に参加することで、日本も敵国と見なされ、国民の命も危険にさらされると説明し、こう訴えた。

「3・11と安保法案の強行採決は、政権は違えど、変わらないことがあります。それは、政府が国民の命を軽んじていることです。当たり前の日常は、 壊そうと思えば簡単に壊せます。生きたいのなら生きたいと言いましょう。自分に関係ないと誰が言えますか。誰かが死なないと来ない平和は嫌です。あなたの 未来も、私のこれからも、後からくる子どものたちのためにも諦めたくないのです。一緒に声を上げてください」

続いて、翌16日に20歳の誕生日を迎えるという同志社大学2年の男子学生は、
「僕らの世代は、生まれた95年に阪神・淡路大震災とオウム真理教による地下鉄サリン事件、小学校へ入学した2001年にはアメリカ同時多発テロが起き、 中学を卒業する2011年に3・11と、節目節目に良くない事が起きています。そして20歳になる年に安保法案の強行採決です。僕は正直言って、大人にな るのが怖い。後の世代に『なんでこんな社会を回してきたんや』と言われるのが怖いのです」と述べたあと、語気を強め、

「僕らの後の世代には、武力のない世界を渡したい。そして、『俺たち、戦争への流れを頑張って止めたから、お前ら絶対に戦争するんじゃねえぞ』って 言いたいのです。どう止めるか。ここから国会の会期末まで2カ月あります。一緒に考えましょう。今年の学生に夏休みはない」と訴えた。

関西学院大学2年の男子学生は、「安倍政権になってからいろいろなものが奪われてきました」と切り出した。
「特定秘密保護法によって僕らの知る権利や自由が奪われ、消費増税でお金が奪われ、原発再稼働や沖縄・辺野古への新基地建設で土地や自然が奪われようとし ている。憲法は権力者を縛るものなのに勝手に解釈を変更して言葉を奪い、さらには安保法案によって僕たちの命まで奪おうとしている。それでも、奪われない ものがあります。それは、声を上げて反対の意志を示すことです」とアピールし、大きな拍手と歓声に包まれた。【矢野宏 新聞うずみ火】 続きを読む >>

 

 

 

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