◇手配師「カデギ」の登場
リムジンガン編集部員で、かつて清津(チョンジン)市に住んでいた脱北者のカン・ジウォンは、肉体労働市場の仕組みの一例を次のように説明した。雇用主は「カデギ」と呼ばれる手配師を通して人を集めるのだという。
「セメントや鉄骨などを扱うことの多い会社は人力を使う機会も多いので、出入りする手配業者の『カデギ』を通して人を募集する。また個人が、アパートの修繕や水道管やポンプの設置のために穴を掘る仕事の場合も、町内の『カデギ』に頼めば人を集めてくれる。手数料は求人する側が払う」
「カデギ」には仕事を受けるエリアの縄張りがあり、そこによそ者が手を出すと、暴力沙汰になることもままあるという。いわば人材派遣業の利権争いだ。
また、人を大勢使うことのある大きな企業所の場合は、会社専属のような「カデギ」がいるという。必要な人員を「カデギ」がすぐ集めてくれるので便利だからだ。数人の「カデギ」が会社の周りで待機し、求人があるとすぐに人夫が集められるようシステム化しているという。
咸鏡北道の小都市に住む取材協力者は2014年6月に荷役労働の労賃について調査して、次のように伝えてきた。
「荷役で多いのは石炭と食糧の積み下ろしだ。日当制ではなくて重量制で、石炭をダンプに積む場合は1トン当たり2万ウォン。大型40トンダンプ1台だと80万ウォンになる。それを人夫の数で割る。食糧の場合は安くて1トン当たり1万ウォンだ。そんな力仕事もあったりなかったりなので、生活が苦しい人がやる場合が多い」
ちなみに、調査時の実勢レートは、1万ウォンが約125円である。
荷役については、次節のこのシリーズの後半の「恵山市『人力市場』の実態」で詳しい事例を紹介する。(続く)
※本稿は「北朝鮮内部からの通信・リムジンガン7号」掲載原稿を加筆修正したものです。