脱北者である筆者の記憶でも、2006年から2009年まで、咸鏡北道清津市の水供給の実態は情けないほどだった。私の住んでいた5階の部屋には水道が上がってこないので、1日に1‐2時間の限られた給水時間になると、家族全員が1階から5階まで桶で水を運んだ。
しかも冬になると水道管が凍って破裂し、水が出なくなることがある。そんな時は近くの川に行って飲み水を運んできた。洗濯も川で済ませていた。
前述の取材協力者は
「水源池の管理悪く、少しの雨が降っても泥水になり水質が悪化する。すると、水源池に消毒薬をまいて供給するのたが、匂いがひどく、汲んだ水を一日置いておかないと飲めないほどだ」
と述べる。
「そんな水を飲んで病気になる人はいないか?」
という記者の質問に対し取材協力者は
「消毒薬の匂いがしたり、発癌物質が含まれていたりしても、それを飲むしかないのだ。国が住民の水問題に無関心だから、危険なのを知りながらも、慣れてしまって(危ない水を)受け入れている」
と吐露した。
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