9月17日付の労働新聞は、平安南道平城(ピョンソン)市で昨年7月に除幕式が行われた金日成―金正日の新たな銅像が、地域住民の「終始一貫した衷情の熱 意」によって建設されたと紹介宣伝した。つまり住民の熱い願いで建設されたというのである。しかし実際には、全土で進められている銅像建設において、地域 当局が必要物資を住民に負担させたり、建設労働に動員を強要したりして、住民たちからは不満の声が出ている。(ペク・チャンリョン)
労働新聞は「長寿山の丘に熱く舞い上がった衷情の熱気」とのタイトルで、平安南道の住民たちが父子に対する「衷情、道徳、義理」を持って銅像建設に献身したという長文の記事を掲載した。
※長寿山は平城市の南に位置する山
記事は冒頭で、平安南道に新たな銅像を建設させた金正恩氏の「大きな信頼と恩情」に接した道内の幹部と住民らが、銅像建設に「純潔な衷情」を捧げた と強調した。また記事では、党と行政機関の幹部らが建設の先頭に立ったとして、銅像建設を積極的に支援した機関と住民を詳しく紹介した。
一例を見てみよう。平城市周礼(ジュレ)洞に住むチェ・チョンエ老人は、老いた体にもかかわらず、4月から毎日夜間の突撃隊に参加し労力支援したのをはじめ、平城市や道内の多くの退役老兵と栄誉軍人(傷痍軍人)らも銅像建設に「至誠」を尽くしたと伝えた。
しかし、実態は全く異なるようだ。アジアプレスが入手したある地方都市で行われた3月の人民班会議の音声を聞いてみると、銅像建設に必要な鉄を一世 帯当たり5キロずつ市人民委員会に直接納めるよう住民たちに強要していた。人民班会議で住民らがあまりに無反応なため、人民班長は繰り返し銅像建設に必要 な資材の供出を強調している。このため、住民の不満が高まっていると、取材協力者は伝えている。
※市人民委員会は地方政府の行政機関。
※人民班は北朝鮮の末端行政組織で、「隣組み」のようなものである。
おすすめ<北朝鮮> 写真特集・無料動画…