シリア内戦は混迷の度合いを深め、アサド政権の政府軍と反体制諸派の戦闘は収まる気配がない。武装組織イスラム国(IS)は北西部に侵攻しつつあり、住民 があいついで脱出する状況となっている。戦禍から逃れようと、多くの住民が故郷を捨て、欧州を目指す。途中で命を落とす者も少なくない。人びとは何を求め ているのか。アレッポ北西部、ラシード地区で活動する市民記者、アハメット・アルバブ氏(27)にネット回線で話を聞いた。【アルビル・玉本英子】
◆市民はどのような暮らしをしているのでしょうか?
アハメット氏:すでに市民生活は破綻しています。電気供給はなく、発電機をまわします。空爆があると市民は外へ出られないので、店も毎日は開いていません。トルコの支援団体の援助などに頼っています。
地区はアサド政権軍の攻撃で、多くの市民が犠牲になりました。たる爆弾が小学校に落ち100人以上の子どもたちが亡くなったこともあります。現在も学校は閉鎖されているため、子どもたちは家に閉じこもったままです。
(※注:【たる爆弾・樽爆弾】ドラム缶のような大型容器に石油、可燃剤、爆発物、金属片などを詰め、上空から投下する爆弾。焼夷弾のような威力で焼き払う)
◆現在、多くのシリア人が国を脱出し、欧州を目指しています。そちらの地区の人たちもそうなのでしょうか?
アハメット氏:私も含めて、ここの住民全員は、生きるため、欧州でもどこでも安全なところに避難したいと考えています。でもまず、地区を出ることが容易ではありません。もし仮に隣国トルコへ抜けられたとしても、ギリシャへ渡るためにブローカーへ渡すお金など、私たちには、ないのです。
◆私たちに何ができるのでしょうか?
アハメット氏:私が言いたいのは、ここでは数えきれないほどの犠牲者が出ているのに、なぜ国際社会は今も沈黙しているのかということで す。なぜ何も変わらないのでしょうか。それはアサド政権の陰謀に加担していることと同じだと思います。どうか、この問題を解決し、これ以上の犠牲者が出な いようにしてほしいと訴えたいです。
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