福島第一原発事故において最も大量の放射性物質を放出してしまったのは2号機であるとされる。大きな爆発があったわけでもない2号機だが、格納容器の圧力 を下げるために中の空気を外に逃がすベント(排気)がうまくいかず、格納容器が損壊した可能性があると言われていたからだ。東京電力はベントはできていた としていたが、調査の結果、ベントは作動していなかったことを一転、認めた。この2号機のベントについて、元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに 聞いた。(ラジオフォーラム

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん
ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラム(以下R):まず、格納容器内の圧力を下げるベントという作業について、詳しく教えていただけますか。

小出:原子炉の中心部分である炉心は、原子炉圧力容器と私たちが呼ぶ鋼鉄製の圧力釜の中に納められています。そ して基本的には、原子炉が動いて生み出される放射性物質は、原子炉圧力容器を含めた一次系と呼ばれる場所に閉じ込めると、原子力を推進してきた人たちは 言っていたのです。でも、何かが起きて、この原子炉圧力容器から放射能が漏れてきても、それを原子炉格納容器という、放射能を閉じ込めるための特殊な容器 で閉じ込めるから、放射性物質は絶対に外部に出てこないというのが、彼らの主張でした。

しかし、原子力発電所を動かしていく経験の中で、アメリカのスリーマイル島原子力発電所(MIT)の事故が1979年に起きてしまいました。そし て、場合によっては格納容器も壊れてしまう可能性があるということに気付いたというか、やはり否定できなくなってしまったのです。

R:気づいて彼らはどう対処をしたのでしょうか。

小出:本来は放射能を閉じ込めるための格納容器ですから、格納容器の中からガスを外に漏らすなんてことは元々、 想定していなかったわけです。けれども、格納容器が大破壊をしてしまったらやはり困るので、事故がどんどん進んでいって大きく壊れてしまいそうになった時 には、バルブを開いて中の放射性物質を含んだガスを意図的に外に出すベントという操作を、彼らはやり始めたのです。

ですから、何やらベントというものが成功すればそれでいいというふうに皆さん思われているかもしれませんが、ベントというのは、もともと放射能を閉 じ込めるために設計された格納容器の中のガスをわざわざ放射能ごと外に捨てるということですので、そのこと自体が住民に対しては大変、危険を加えるものに なっています。原子力発電所というのがそういう機械なのだということを象徴する装置でもあります。

R:福島第一原発の事故の場合、この2号機はどのような状態になっていたのでしょうか。

小出:1号機も2号機も3号機も結局、最後には原子炉が熔けてしまったのですけれども、2号機の場合は、3月 14日の夕方から原子炉格納容器の中の圧力がどんどん上がってきてしまいました。格納容器といえども、ある一定の圧力までしか耐えることができない構造物 なわけで、耐えることができる圧力を超えてしまうと、格納容器が自然に壊れてしまうわけです。

そうなったら困るということで、放射能を含んだ格納容器内のガスを意図的に外に捨てる、ベントという作業をやらざるを得ないという決断を東京電力は 下したのです。そして、そのベントという作業をやろうとしてさまざまな試みを行ったのですけれども、どうもそれが上手くいかずに、大量の放射性物質が外に 出てきてしまったのではないかと、長い間考えられてきました。今回、5月20日にその検証の結果というのが東京電力の方から報告されまして、やはり2号機 の場合にはベントができていなかったという報告になりました。

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