◆調停式に参加する8団体、非合法組織解除へ
ミャンマー連邦政府と少数民族武装勢力との間で3年にわたって交渉が続いてきた全土停戦協定の調印式が15日、首都ネーピードーで開催される。2014年 3月以来、全土停戦協定案を話し合う協議が、アウンミン大統領府相を団長とする政府・議会・国軍の代表で構成される連邦和平実務委員会(UPWC)と少数 民族武装諸組織を代表する全土停戦調整チーム(NCCT)との間で断続的に行なわれ、ことし3月末に最終案で合意に至っていた。
しかし、最終段階にさしかかり、「誰が同協定に調印するか」をめぐって紛糾。少数民族側は、パラウン州解放戦線(PSLF)など21の少数民族武装 組織の協定調印を求めたが、政府側は15の少数民族武装組織に限定した。少数民族側は首脳会議をタイ・チェンマイで開催し、9月のテインセイン大統領との 交渉に臨んだが、最終的に協定に参加するのは、8組織にとどまることとなった。カチン独立機構(KIO)や新モン州党(NMSP)など主要組織は「全参 加」の方針を堅持し、調印への参加を見送った。
15日の調印式に参加するのは、カレン民族同盟(KNU)、カレン民族解放軍平和評議会(KNLA-PC)、民主カレン仏教徒軍(DKBA)、南 シャン州軍、(SSA-S)、チン民族戦線(CNF)、アラカン解放党(ALP)、パオ民族解放機構(PNLO)、全ビルマ学生民主戦線(ABSDF)の 8組織。調印に先立ち、内務省はこれらの組織を非合法組織として解除することを発表した。
一部の少数民族武装組織しか調印しないことで、「全土」停戦協定としては不完全であることは否めない。しかし、協定の第5章「政治対話の保証」に は、協定調印後、60日以内に政治対話の枠組みを策定し、90日以内に政治対話を開始することが定められている。すなわち、きょうの調印によって、12月 15日頃までには政治対話の枠組みを策定し、来年の1月15日頃までには政治対話が開始されることになる。
来月11月8日には、民政移管後初の総選挙が行なわれ、アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)や少数民族政党の躍進が予想される。少 数民族側の対話の相手となる政府側の陣容が大きく変わることで、民主主義と連邦制を軸とする新しい国家像の実現可能性がより高まるといえるだろう。【赤津 陽治】
ミャンマー連邦共和国政府と民族武装諸組織との間で締結された「全土」停戦協定日本語訳全文」は有料会員版でお読みいただけます>>>