北朝鮮において鉄道は交通の大動脈であり、また代表的な大規模国営企業のひとつである。経済難によって車両や施設の老朽化が進むみ、深刻な電力事情で運行 が麻痺していることは以前から伝えられてきたが、金正恩時代に入って鉄道はどのように運営されているのだろうか?最新の運賃や運行状況について、咸境北道 清津市(チョンジンシ)に住む鉄道事情に詳しい取材協力者に聞いた。(ペク・チャンニョン)

北朝鮮ではぼろぼろになった貨車をしばしば見かける。線路工や駅員たちが、お金を稼ぐために車体から鉄を取り外して売り払う不正が横行している。 2013年9月リ・フン撮影(アジアプレス)
北朝鮮ではぼろぼろになった貨車をしばしば見かける。線路工や駅員たちが、お金を稼ぐために車体から鉄を取り外して売り払う不正が横行している。 2013年9月リ・フン撮影(アジアプレス)

 

「朝鮮に住む多くの人も、列車運行の遅れを電力不足だと思っているが、実は列車を牽引する機関車の不足と頻繁な故障に大きな原因がある。一番長い路線であ る「東海岸線」を見ると、停電による遅延よりも、むしろ故障した機関車を修理したり、機関車の交換を待つことで長い時間を浪費している」
清津市に住むこの協力者は言う。

※東海岸線: 北朝鮮の南部と北部地域を、東海岸に沿って繋いだ主な鉄道路線の一つ。

この取材協力者によれば、咸境北道では、鉄鉱石生産基地の茂山(ムサン)鉱山と、大規模製鉄所に優先的に電気が供給されるため、その区間を結ぶ鉄道への電気供給は悪くないのだという。

「恵山(ヘサン)や咸興(ハムフン)、平安南道(ピョンアンナムド)や黄海道(ファンヘド)などの中部、南部地域は電力難が深刻で、列車運行は情け ない有様だけれど、茂山と清津をつなぐ路線の場合、住民地区には電気が来ていないが、停電で列車の運行に大きな支障が出ることは珍しい。経済的に最も苦し く食糧配給が途絶えた時期でも、茂山地区の鉄道の電力事情は良かった。現在も同じだ」
とこの協力者は証言する。

茂山鉱山の鉄鉱石は中国に輸出されて貴重な外貨収入を得ている。さらに咸境北道にある「金策製鉄所」と「城津製鋼所」にも茂山鉱山で生産する鉄鉱石を送らなければならない。

「電気が切れれば国内の鉄鋼生産が中断することになってしまう。だから優先的に電気が供給され、停電になってもすぐ復旧させるのだ」」
協力者はこのように言う。
※金策製鉄所と城津製鋼所は日本の植民地期に建設された。北朝鮮で最大の「冶金基地」と呼ばれている。
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