「イスラム国」はヤズディ教徒の暮らす町や村を襲撃、その場で殺害された男性たちも少なくない。バシャールさん(写真:右)は、首を 切り落とされ放置された親戚の遺体を携帯端末に撮って残していた。2014年9月、イラクのシンジャル山で玉本英子撮影(写真の一部をぼかしています)
「イスラム国」はヤズディ教徒の暮らす町や村を襲撃、その場で殺害された男性たちも少なくない。バシャールさん(写真:右)は、首を 切り落とされ放置された親戚の遺体を携帯端末に撮って残していた。2014年9月、イラクのシンジャル山で玉本英子撮影(写真の一部をぼかしています)

 

安倍政権の言論干渉
1月21日、外務省は「いかなる理由があってもシリアに入って取材しないよう」新聞協会などメディア団体に異例の要請を出した。2月にはシリア取材を計画 していたフリー記者の杉本祐一さんに対し旅券返納を命じている。「身辺の安全」がその理由であったが、記者に対する事実上の出国禁止措置である。安倍政権 の強権発動に、国際報道に携わる者の間で衝撃が走った。

私の所属するアジアプレスには、時折外務省や警察から電話が入る。中東地域で取材する同僚記者の「安否確認」が名目なのだが、シリアやイラクとその周辺で の取材への牽制だと感じている。危険地域を取材するかどうかは報道側が独自に判断することであって、政府がその基準を決める類のものではない。政府からの 独立はジャーナリズムの根幹だ。それを安倍政権は揺さぶっている。

シリアでは、アサド政権が今も自国民に対する空爆を行い、「イスラム国」は支配エリアで残虐行為を続けている。「源流」を取材する中東、欧米、日本の記者がいて、世界は難民流出の原因を知ることができるのだ。

※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」9月29日付記事に加筆修正したものです。

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