ああ、ついに終わった。ため息とともに人々の肩の力が抜ける音が聞こえてくるような感覚だった。
いわゆる「一人っ子政策」の撤廃を発表して、中国共産党の指導部の会議が閉幕した時だ。貧しかった中国は人口を抑制するため、中絶の強要や違反者への罰金で1組の夫婦が持てる子供の数を1人に制限した。
しかしここに来て労働人口の減少と、予測では2050年には国民の3人に1人が65歳以上になるほどの超高齢化に直面し、30年にわたる人間の生態に対する作為、という"壮大な実験"の終結を宣言したのだ。
農村などに行けば、セメントの壁に直にペンキで書かれた「計画生育」という文字が否応なしに視界に入ったものだ。
その文字が風雨にさらされ判読できない程にかすれる頃には、こんな自然の摂理にもとる制度が存在した過去さえ知らない世代が育っているのであろう。
しかしこの政策を決して忘れない人たちがいる。例えば、大事に育てた一人っ子を事故や病気で失った親たちだ。
精神的な喪失感の中で年老いた彼らは今、養ってくれる子供がおらず経済的な困難にも喘いでいる。人口抑制が現代中国の礎になったと言うならば、この制度で幸せを得たのは誰なのか?
30年以上にわたって忠実にこの決まりに従ってきた人たちを、決して忘れてはいけない。