R:これが初めて行われたのは、世界最初の原子炉で、アメリカが開発したプルトニウム生産炉ですね。
小出:そうです。世界で一番初めの原子炉というのは、1942年にシカゴ大学のサッカー場の地下で作られた小さ な模型のような物なのですが、これで原子炉というものが動くということがわかりまして、原子炉を動かすことができれば、炉心の部分にプルトニウムが生み出 されるということを物理学者が確信を持ったわけです。そして、プルトニウムを作るための専用の原子炉というのをワシントン州ハンフォードという所にたくさ ん作りまして、そこで作り出されたプルトニウムを原爆にしたわけです。
R:ということは、プルトニウムを製造するというのは、ほぼイコール核兵器を造るということなのでしょうか。
小出:原子炉の中でプルトニウムを作るのですが、原子炉の使用済み燃料の中にプルトニウムが存在しているだけで は、原爆を作ることはできません。使用済みの燃料の中からプルトニウムを取り出すという技術も必要になります。ですから、原子炉をまず動かしてプルトニウ ムを作り、できたプルトニウムを分離するという作業をしなければいけません。再処理と私たちは呼んでいるのですが、その技術の両方を持たない限り、原爆は 作れません。
R:核燃料サイクルが、まさにその技術をやろうとしているわけですよね。
小出:おっしゃる通りです。日本では、すでにもう58基の原子力発電所を作ってしまいまして、使用済みの燃料の中に大量のプルトニウムを生み出しました。その使用済みの燃料の中からプルトニウムを取り出す、つまり再処理という作業が必要になったわけです。
R:その技術を確立しない限り、原爆は作れないのですね。
小出:日本には、その再処理の技術や能力がありませんので、これまではイギリスとフランスに送って、向こうの再 処理工場でプルトニウムを分離して取り出してもらってきました。でも、日本としてはそれではやはり困るので、自分で再処理をやりたいと、青森県六ヶ所村に 巨大な再処理工場を作って運転しようとしているところです。