脅迫が続き顔を隠して報告したガーナのジャーナリスト・アナス氏。左側の人物だ。 (撮影アイ・アジア)
脅迫が続き顔を隠して報告したガーナのジャーナリスト・アナス氏。左側の人物だ。 (撮影アイ・アジア)

 

国境を越える調査報道―ガーナの児童労働報道を例に
セッションの1つをのぞいた。
「越境する調査」と題した内容は、アフリカで国境を越える不正を調査報道で暴いてきたジャーナリストの話だ。

アフリカには「FAIR(アフリカ調査報道協会)」という非営利団体が設立され、多くのジャーナリストが連携して調査報道を行っているという。

アナス・アレメヤウ・アナス(Anas Aremeyaw Anas)は非営利報道「タイガー・アイ(Tiger Eye)」の代表だ。ガーナを拠点に、カカオ農場での不当な児童労働の実態や、欧米の企業と現地政府との癒着の実態を暴いてきた。

アナス氏は顔が隠れる帽子を手放さない。サングラスもしている。「身の安全を守るためには仕方ない」と話した。脅迫は日常茶飯事だという。

「児童労働も、極めてわかりにくくなっており、欧米の人権団体が入ってきて『農場で児童が働いているから児童虐待だ』と叫んで終わるような状況では ない。何日も地元にへばりついてその状況をしっかり調べ、どの部分にどういう問題があるのか、そこに地元政府や有力企業のどういう思惑があるのか、明らか にする必要がある。それが我々の役割だと思っている」
とアナスは話す。

会場に集まった欧米の記者からは、「私の国からの不正があれば是非、情報を共有したい」との申し出が相次いだ。日本人の記者からも、「日本政府は中 国との競争の中で、しきりにアフリカにお金をばらまいているとされる。そうした動きがわかれば是非連絡してほしい。我々も一緒に取材をしたい」という話が 出た。

会議の司会を務めたのは、「非営利報道」を最初に米国で始めたチャールズ・ルイス(Charles Lewis)。ルイスは、「各国のジャーナリストが連携する場というのがこの会議の大きな意味だろう。特に、『非営利報道』は互いが協力して取材を進める という文化を作っており、それが国境を越えて展開されるのは極めて意味がある」と話した。(文中敬称略、続く)

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