武装組織イスラム国(IS)は、シリア人活動家2名をトルコで殺害したとする映像を先月30日、公開した。殺害されたのは、ISが「首都」とするラッカで 地下活動を続ける「静かに虐殺されるラッカ」のメンバー1人と別グループの活動家。先月末、トルコ南東部のシリア国境近くのシャンルウルファで殺害された とみられる。
殺害されたのは、イブラヒム・アブドゥルカディル氏とファレス・ハマディ氏と思われる。ISは支配地域内の反対勢力の摘発や襲撃に力を入れており、シリア政府軍やクルド組織の協力者らを拘束しては、「スパイ狩り」として斬首や銃殺して処刑している。
「静かに虐殺されるラッカ」はおもにラッカで隠しカメラを使って密かに公開処刑や市民生活の実状を撮影、また、反ISスローガンのビラを貼ったり、 壁にスプレー描きする映像をネットで公開してきた。厳しい生活を送る市民に物資を届けるなどの活動も行っている。9月には国際報道支援団体から「報道の自 由賞」が送られている。
ISの殺害映像には、首を切り裂かれて殺害されたとみられるメンバーの死体が映っており、「『静かに虐殺されるラッカ』の背教者どもをトルコ・ウル ファで殺害した。いかなる背教者も"静かに殺される"ことになるのだ」とある。支配地域内での摘発に加え、シリア国外でも反対勢力を追い詰める組織力があ ることを内外に誇示する狙いがあると思われる。アジアプレスでは今年2月、ラッカの同組織の中心メンバーと秘密ネット回線でインタビューし、市民の実状を 伝えたが、今回殺害された2人は別メンバー。「静かに虐殺されるラッカ」はメンバーが殺害されたことをサイト上で認め、追悼コメントを載せた。(アジアプ レス編集部)
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