国連平和維持要員による性搾取も
最も保護を必要とする子どもの安全・尊厳が、それを守るべき人々からも脅かされている。国連平和維持軍兵士、難民や国内避難民を保護・支援する責任のある団体に雇用されている人さえもが、その地位を利用して、子どもを搾取・虐待する。
国連の行った調査によると、国連難民高等弁務官事務所で働く職員も含む人道支援にあたる要員が、主に少女たちと性交渉をもつために、支援物資や食糧を利用していた例が報告されている。
10歳の少女さえも、1ドルほどのお金、卵2つ、ミルク1杯、ピーナツバターといった食べ物と引き換えに性的行為をさせられていた。強かんした後に、あたかも同意があったかのように装うため、お金や食べ物を与えられることもあった(46)。
コンゴでは、国連平和維持要員(軍・民間)が残した子どもたちが増えている(47)。性的搾取・虐待の結果生まれてきた子どもたちも、虐待の被害者である。彼らは、家族や共同体から白眼視されがちである。
紛争下では、共に暮らしている親があっても、子どもたちに保護を与えないばかりか、自らの子どもを危険な状況に追いやってしまう家族も少なくない。 障害や病気のある子は、両親や世話をしてくれる人がその役割を負いきれず、遺棄されるか、身体的・心理的虐待にあうリスクが高い。
家族が障害児を通学させるかわりに、道で物売りさせることもある(48)。北部アフガニスタンに住む多くの貧しい家族は、しばしば10歳を過ぎたばかりの幼い娘を50歳代の男性と結婚させる。
このような結婚は、羊などと交換に娘を「売った」親には経済的な利益をもたらすが、少女は、嫁を「買った」と考える夫やその家族から尊重されることは期待できない。そればかりか、身体的、精神的な虐待を受ける可能性が高い。
また、若年での妊娠出産にともなう合併症および死亡のリスクにさらされる。強かんの結果生まれた乳児を養育できない・養育したくない母親は、出産した病院に子どもを遺棄する。(続く)
※本稿の初出は2014年6月発行の「京女法学」第6号に収録された、市川ひろみさんの論考『冷戦後の戦争と子どもの犠牲』です。