アフガニスタン、イラクでの「対テロ」戦で、米軍は国際的な規範に従わず、子供も逮捕、拘束、尋問、そして殺害していた。「敵」に年齢による区別はないと いう理由でだ。一方の米軍にも18歳になったばかりの「子供」の兵士が参戦していた。京都女子大の市川ひろみ教授の報告。(整理/石丸次郎)
子供でも「敵」は逮捕・殺害する米軍
2001年9月11日の「同時多発テロ」事件に対して、米国は「対テロ戦争」を宣言し、アフガニスタン、イラクに軍事介入してきた。戦場においても子ども は特別に守られるべき存在であるという国際的な規範に米軍は従わず、子どもも逮捕、拘束、尋問、そして殺害する。「敵」に、年齢による区別はない。
米軍兵士は、派遣されたアフガニスタンやイラクで、頻繁に子どもに遭遇する(49)。両国とも、総人口の約半数が18歳未満である。米軍への攻撃に加わる子どもたちもいる(50)。
米軍は、実際に武力行使をした子どものみならず、危険だと思われれば、子どもでも殺傷した。陸軍101空挺師団機関銃手としてイラクにいた21歳の ニック・ボッグスは、10歳にも満たない子どもに向けて発砲し、殺害した。この子どもは、米軍との激しい戦闘によって路上に残された携行式ロケット砲 (RPG)を回収しようとしたのだった。
「一日中攻撃され続けていれば、それが兵士か子どもかは重要ではない。RPGがわれわれを傷つけるということに意味がある」(51)。米軍の兵士に とっては、子どもであっても、自らと部隊の仲間の命に対する脅威である。2002年1月、アフガニスタンでの戦闘で、一人の米軍軍曹が14歳の少年によっ て殺されたと報道された(52)。
イラクで頻繁に行われた家宅捜索では、子どもたちの目の前で父親や兄弟が暴力的な扱いを受け、連れ去られた。また、子どもであっても容疑者として逮捕・収容し、拷問が加えられた。
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