橋下大阪市長が新たに条例まで作って奥下剛光氏を特別秘書に採用したことは裁量権の逸脱だとして、大阪市の住民が給与の支払いの停止と、すでに支払われた 報酬の返還を求めている裁判で、12月9日に奥下氏本人と秘書課職員が大阪地裁に出廷して尋問が行われた。同僚職員の肩書を答えられなかったことや大阪市 の具体的な業務をしている証言は数件だけで、大阪市の職員としての公務をほとんど行っていない疑惑が深まる結果となった。(アイ・アジア編集部/鈴木祐太)
橋下市長が、特別秘書を雇うことができる条例をつくったのは大阪市長に就任後すぐの2012年1月のことだ。しかし、奥下氏の母親が橋下徹後援会の会長 で、一族が橋下氏の有力支援者だったため、情実採用ではないかという声が上がっていた。また、奥下氏の市職員としての業務記録、出勤簿など何一つ勤務実態 を示すものがなかったため、2013年5月に奥下氏への給与の支払いの停止と既に支払われた報酬のうち629万円余りの返還を求める訴えを、大阪市の住民 から起こされていた。
この日は、秘書課の職員と奥下剛光特別秘書の二人の尋問が行われた。秘書課の職員への尋問の後、休憩を挟み、奥下氏は緊張した面持ちで証言台の椅子に座り尋問が始まった。
まず、奥下氏は、宮澤喜一元衆院議員、逢沢一郎衆院議員の私設秘書をそれぞれ8年、1年間務めた後、橋下氏が大阪府知事選挙を戦った時に橋下氏に出会い現在に至るまでの経歴を話した。
秘書課職員への尋問でも出たのが、特別秘書ができた経緯、そして、その役職に奥下氏が就いた経緯であった。奥下氏も秘書課職員も、これまでの一般職 職員では行政的な役割はできるが政治的な動きに関しては限界があるので、比較的自由に動ける特別職を設けたとした。与党を中心とする政党幹部、大臣クラ ス、中央官僚と人脈を持っている人物としてふさわしいのが奥下氏であるので橋下市長から白羽の矢が立ったと証言した。