昨年11月下旬、来日したイラク人女性でアッシリア系キリスト教徒のシーラン・シェルさん(41)は、日本のNPO「IVY」(本部・山形市)の現地ス タッフだ。過激派組織「イスラム国」(IS)によって町や村を追われたイラクの国内避難民、そしてシリアからの難民への支援を続けている。【玉本英子】
先月、来日したイラク人女性でアッシリア系キリスト教徒のシーラン・シェルさん(41)は、日本のNPO「IVY」(本部・山形市)の現地スタッフだ。過 激派組織「イスラム国」(IS)によって町や村を追われたイラクの国内避難民、そしてシリアからの難民への支援を続けている。
彼女が暮らすイラク北部クルド自治区アルビルには、昨年、ISの襲撃から逃れてきた避難民が急増、その数は数十万人にのぼった。カバンに身の回り品 を詰め込み、徒歩で何十キロも歩いて自治区まで逃れてきた家族、顔をゆがませながら子どもを抱え、検問所に並ぶ親子。その列は何キロにもおよんだ。その光 景を見たシーランさんは思った。「これは大変なことになる」
ISは、制圧した地域で他宗派や異教徒を徹底的に迫害した。キリスト教徒には追放令が出され、家や土地はすべて没収された。かつて100万人以上いたイラクのキリスト教徒は、戦乱で国外脱出が相次ぎ、20万人前後に減ったといわれる。
国連や各国の団体が救援活動を続けるが、避難民の数が多すぎて十分な支援が行き届いていない。シーランさんの団体は、キャンプ外の地区にいる避難民 の子どもを支援することにした。多くは学校へ行ってはいなかったからだ。彼女は教育当局者に何度もかけあい、今年10月末、避難民の居住地区に小学校を開 校させた。プレハブ校舎は日本の政府と市民からの寄付で建てられ、避難民の子ども600人が学校へ通えることになった。
シーランさんが支援を続ける子どもの一人、キリスト教徒のサンディちゃん(小5)は、昨年8月、暮らしていた町にISが迫り、家族でアルビルに脱出 した。教会は破壊され、十字架も引き倒された。「元の家に戻れないのは悲しい。でも新しい学校で友達をつくりたい」。彼女の夢は医師になって多くの人を助 けることだ。
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