鉄道やバスによるストライキは今や「死語」となったが、労働者としての権利である。全港湾山陽バス分会の運転手たちは会社側の違法な働かせ方を断つため、最後の手段に打って出たのだ。
発端は11年3月に遡る。山陽電鉄の自動車部が子会社の神戸山陽バスにバス事業を譲渡する形で分社化され、山陽バス株式会社が発足した。全国で行われた鉄道各社の赤字を理由とするバス部門の分社化と、それに伴う労働条件の引き下げだった。
山陽バスは、垂水区(人口22万人)を中心に走る路線バスのほか、神戸と淡路島や東京などを結ぶ高速バス、明石市のコミュニティバスの一部を運行し ている。垂水区の半数が鉄道の駅から遠いニュータウンで暮らしており、路線バスは効率が高く、本体である山陽電鉄を支えていた。
「分社化する前、運転手全員が山陽電鉄労組に加入しており、収入も福利厚生も安定していました」と、山陽バス分会の渡辺誠治分会長(54)は振り返る。
分社化に伴う労働条件などの交渉はすべて山陽電鉄労組の執行部に一任されていた。その結果、運転手だけ役職手当がカットされて基本給のみ。年収ベースで20~30%の賃金ダウンを了承して会社に残るか、辞めるかの選択が突きつけられた。
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