張粛清の理由は「唯一領導体系違反」
しかし、北朝鮮の唯一独裁はそう甘くなかった。脱北して外部世界にいる私ですら気づいた張成沢の増長と異変は、結局、わずか二年で幕引きとなったのである。
ということは、おそらく北朝鮮中の人間がメディアに出る張成沢の写真を見て、その権勢の強さと「異変」を感じたに違いない。
この張成沢の、あたかも領導者と肩を並べる、あるいは凌駕しているかのような印象を与えた写真は、金正恩に対する「不敬」、「不遜」の象徴として扱われたようである。
2013年12月、北朝鮮当局は張成沢の粛清に当たって、「国家安全保衛部の特別軍事裁判に関する報道」を発表し、張成沢粛清にいたる経緯と理由を公開した。この報道は次のように指摘している。
「張成沢は、敬愛する金正恩元帥様の現地指導にしばしば随行するようになったことを悪用して、自分がいつも元帥様の近くにいながら革命の首脳部と肩を並べられる特別な存在であるということを国内外に示して自分に対する幻想を生じさせようと企んだ」。
張成沢は、実力者たる自分をメディアを通じて顕示しようとしたが、それが「指導者並び立たず」を大原則とする唯一独裁体制に挑戦しようとした証拠として使われたのだろう。(ペク・チャンリョン/石丸次郎)
※本稿は、「北朝鮮内部からの通信・リムジンガン」第7号の特集「揺れた金正恩の三年 唯一独裁確立と張成沢粛清を振り返る」の記事に加筆修正したものです。張成沢粛清関連の詳しい内容は「リムジンガン」7号をご覧ください。
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