加賀さんは、民生委員だった幸夫さんの遺志を継ぎ、地域の高齢者らの見守り活動を続けている。「『安心して最期を迎えられる街に』という父の言葉を思い出します。そのためにも地域のつながりが大切だと思います」
玄関前にほこらが設けられ、少女の観音さまが安置されている。自宅再建と桜子ちゃんの七回忌を機に、幸夫さんが仏師に制作を依頼したものだ。震災直 後、お悔やみに来てくれた人たちから「誰にでも笑顔であいさつする、この街の太陽やった」と言われた桜子ちゃんをほうふつとさせる、ふっくらした優しい笑 顔を浮かべている。
手を合わせたあと、柔和な表情を眺めながら、加賀さんは、生前幸夫さんが語った言葉を思い出していた。
「あの震災でいっぱい失くしましたが、得たものは人と人とのつながりでした。桜子がそれを教えてくれたような気がします」
【矢野 宏/新聞うずみ火】