R:要するにもう日本ではこれ以上、原発の数を増やすのが難しいので、海外にマーケットを求めないといけないというような計算もやはりあったということなのでしょうか。

小出:もちろんです。1970年から敦賀、美浜というように沸騰水型と加圧水型の原子力発電所ができたのです が、毎年、三菱が加圧水型を、日立と東芝が1年交代で沸騰水型を一基ずつ造っていくというペースで1990年ぐらいまでは来ました。しかし、それ以降は日 本の中で新たに原子力発電所を作ることができないということがわかってしまいまして、建設できる原子炉の数もどんどん減ってきてしまったのです。そこで、 とにかく海外に売り込まなければいけないということで、三菱も日立も東芝も頭を捻っていたわけですが、東芝が2006年に奇策に打って出ました。沸騰水型 をこのまま続けていてもダメなので、加圧水型を海外に売りつけたいと思ったのです。それでどうしたかと言うと、加圧水型を造ってきた米国のウエスティング ハウスという巨大なメーカーを丸ごと買収してしまうということをやったのです。

それまでウエスティングハウスと結び付いていたのは三菱だったわけですけれども、三菱はそのおかげで弾き出されてしまいまして、仕方がなくてヨーロッパの加圧水型メーカーであるアレバという会社とくっついて、世界に売り込みを図ろうという形になったのです。

2006年の頃は、日本では原子力立国計画なんていう計画を作り、一度は停滞した原子力を国主導で復活させようとしていました。東芝はウエスティン グハウスと結び付くことで、とにかく金儲けができると思ってしまったのです。しかし残念ながら、世界ではあまり原子炉の数が増えませんし、福島第一原子力 発電所の事故が起きてしまいましたので、もうほとんど海外に原子炉を売るということすらできなくなってしまって、東芝は原子力部門で大幅な赤字というのを 抱えてしまいました。それを粉飾決算でなんとか言い逃れようとしたわけですけれども、それが発覚して苦境に陥っているということです。

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