東芝の不正会計事件の背景には、この企業の原発部門の収益悪化があると言われている。世界的に原子力発電が見直されている中で、日本のメーカーは今も原発 にこだわり続け、いつの間にか世界的なプラントメーカーと目されるまでになっている。この問題について、元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞 いた。(ラジオフォーラム)
◆米国メーカーを買収してまで
ラジオフォーラム(以下R):日本では東芝、日立、三菱重工の3社が、原子力事業の中核会社であり、俗に言われ るプラントメーカーと見なされています。世界的には原子力事業は採算性がよくないと言われ、この分野から撤退する大手企業が多くある中で、日本のメーカー は今も原発に執着しています。なぜこれほどまで原発にこだわるのでしょうか。
小出:日本には2つの形の原子力発電所がこれまで動いてきました。ひとつは東京電力が使っていて、福島第一原子 力発電所の原子炉もそうだったのですが、沸騰水型と呼ばれている原子炉です。もうひとつは関西電力が使っている加圧水型という原子力発電所があるのです。 どちらも米国で開発された原子炉で、沸騰水型の方はゼネラル・エレクトリック、加圧水型の方はウエスティングハウスという巨大メーカーが開発したものだっ たのです。
R:東日本が沸騰水型、西日本の多くが加圧水型になっていますね。
小出:日本では、加圧水型の方は三菱が引き受ける。そして沸騰水型の方は日立と東芝が引き受けるという形でこれ までやってきました。日本では沸騰水型と加圧水型がほとんど同数できたのですが、世界全体を見ると加圧水型の方が圧倒的に優勢だったのです。そういう状況 をずっと見てきた東芝が2006年になりまして、このままゼネラル・エレクトリックと結びついて沸騰水型を続けていると、海外に売り込むことができないと 考えたわけです。
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