人々が騒ぎを起こした理由は、一つには国際試合の観戦に慣れていないことがあった。私のような体育の専門家たちは、海外の情報にも触れることができる。
朝鮮チームのレベルがどの程度であり、試合で勝てる見込みがどのくらいあるのかも事前にわかるから、たとえ負けても冷静に受け止めることができる。
しかし一般国民は違う。海外とのレベルの違いなど知りようもない彼らは、朝鮮が不甲斐なく負けるのが許せないのだ。そのうえ、子どもの頃からボールに親しんできた「オジサン層」が主体の朝鮮のサッカーファンは、非常に「アツイ」のが特徴だ。
どんなに経済や国際情勢が厳しいときでも、主要大会の試合が行われる会場には雲のように人が集まってくるのである。
ただ、2015年のイラン戦の際に起きた騒ぎの大きさは、それだけでは説明がつかないような気がする。当時は90年代後半の食糧難を乗り越え、国民一人ひとりが、文字通り自分の力で生活を再建していた時期だった。
そんな状況の中で、それまで抑えつけられていた国民の感情が、一気に爆発したのではないかと思えるのだ。(寄稿キム・クッチョル/訳・整理リ・チェク) (続く)
※本稿は、「北朝鮮内部からの通信・リムジンガン」第7号の記事に加筆修正したものです。北朝鮮スポーツ関連の詳しい内容は「リムジンガン」7号をご覧ください。
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