北朝鮮は、党大会を控えた重要な時期に、なぜ中国をあえて遠ざける核実験と「ロケット」発射を強行したのか? 非合理、衝動的な判断が下されたのは、誰も金正恩の自己顕示欲を抑えられない北朝鮮権力の内部事情がある。

労働党大会の重要性

金正恩政権は、今年5月に、36年ぶりとなる労働党大会の開催を宣言している。北朝鮮にとって党大会は極めて重要な政治行事だ。金正恩時代4年間の成果と実績を国内にアピールし、これからの政治経済の新しい中長期ビジョンを示さなければならない。

ところが、金正恩氏の実績らしきものは、2013年2月の核実験以外皆無だ。首脳外交はゼロ。ロシア、中国首脳部はじめ関係の悪くない国との首脳会 談は、やる気さえあれば実現可能だったはずだが、金正恩氏は出て行かなかった。韓国の朴槿恵大統領が中国、米国首脳などと会談を重ねたのと対照的だ。

経済は、地下資源輸出で対中国貿易を増大させたが、大型国営企業の稼働不振に改善の兆候は見られない。平壌中心部に次々に作った高層建築や娯楽施 設、外貨商店などのおかけで、外国人が訪れる場所だけは華やいで見えるが、平壌市郊外は沈滞したまま、地方に至っては惨憺たるものだ。とりわけ電力難は 2014年後半から深刻で、「一秒も電気が来ない日が珍しくない」という報告が多数届いている。

アジアプレスでは、平壌と地方に住む人たちに、「金正恩時代になって暮らしがよくなったか?」という共通の質問をして、政権への評価を定期的に尋ねているが、昨年「イエス」と答えた人は皆無である。民心の離反は著しい。

金正恩氏は、繰り返し人民生活の向上を訴えてきた。今年の新年辞では来たる党大会について「 朝鮮革命の最後の勝利を早めるための素晴らしい設計図を示すだろう」「経済強国の建設に総力を集中し、国の経済発展と人民生活の向上において新たな転換を もたらすべき」と述べている。
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