李永吉粛清の真の理由はまだ明らかではないが、金正恩に異見を提出した、あるいは不満を表したものとされて、不服従、忠誠不足を断罪されたのではな いかと見ている。そのように推測される根拠が、この記事の注目部分の二点目だ。「唯一的領導体系」を強調する記述が記事中に10度も登場しているのだ。い くつか紹介しよう。

「敬愛する金正恩同志は、全党で党の唯一的領導体系を打ち立てるための事業を、着実に展開しなければならないと述べられた。形式主義の古い枠をなく し、すべての幹部と労働者が、党の唯一的領導のもとで事業をし、生活して、党の思想に反する些細な要素とは厳しく闘争することについて強調された」

「敬愛する金正恩同志は、全軍に党の唯一的領軍(ママ)体系を確立する事業を、新たな高い段階へと深化させることについて指摘された。全軍に最高司 令官の命令の下に一つになって動く革命的軍風を打ち立て、党の命令、指示を最短期間内に最後まで遂行しなければならないとし、人民軍隊はただ最高司令官が 示す一方向にのみ進むべきだと述べられた」
「唯一的領導体系」とは、党・軍・国の機関、そして幹部はじめ全国民に、金正恩への絶対服従、絶対忠誠を誓わせる統治システムのことである。それは憲法、 労働党規約を超越する、北朝鮮の最高綱領=「掟」として明文化されている。金正恩の世襲後継に合わせて2013年6月に策定された「党の唯一的領導体系確 立の10大原則」(以下10大原則)である。
次のページ:「10大原則」は官営メディアには一切掲載されていない...

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