◆ 避難訓練しないまま
また、高浜原発で重大事故が起きた際の広域避難計画は、再稼働が決まった昨年12月にできたばかりである。だが、避難対象となる30キロメートル圏に住む 18万人近い人々の移動や受け入れを想定した準備や、訓練はまだ行われていない。

万が一、今から1年以内に福島第一原発事故のような地震や津波による過酷 事故が高浜原発で起こった場合、事故処理の拠点もなく、住民の避難もほとんど「ぶっつけ本番」という事態が生じることになる。プルサーマル発電の実施や、 3年11カ月停止していた原発が再稼働すること(過去にそのような例はない)を考えれば、地震や津波がなくても過酷事故は想定し得る。やはり、福井地裁の 樋口英明裁判長の司法判断は正しかったと言えよう。

改めて福島第一原発事故の教訓を思い起こしてみよう。「事故は起こり得る」という前提で、可能な限りの対策を立てて備えること。そして、不幸にも事 故が起きた場合には、住民の避難を速やかに行い、少しでも被ばくリスクを下げること。さらに、避難先の受け入れ体制をしっかりと整えることだったはずだ。 その教訓が高浜原発では(もちろん、川内原発も)全くいかされていない。その上での再稼働であることを、私たちは心に刻んでおく必要がある。

まもなく5年目の「3.11」がやってくる。関西電力は、高浜原発再稼働と同時に、今春に電気料金を値下げする方針を発表した。一方、福島第一原発 事故の被害は、収まるどころかますます深刻化している状況だ。「極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等とを並べて論じるよ うな議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的には許されない」という樋口裁判長の判決文を、関西電力は今一度読み返して、何をすべきか 考えていただきたい。

 

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