R:そういう危険な高線量の現場に、線量計を持たないで入って行ったり、わざと線量計を鉛のカバーで覆って、線量を低く見せかけたりするといった、つまり被曝線量をごまかして働かせているという問題もあるようです。

小出:そうですね。被曝線量を低めに見せることが後を絶ちません。例えば、雇用者側が必要に迫られ、雇っている労働者の被曝量をなるべく少なめに見せたいと思って、線量計にわざわざ鉛のカバーを付けさせて、被曝量を少なめに出させるように強制したという事例もありました。 ただ私自身は、もっと悲惨なのは、労働者自身が自分の被曝量をごまかさなければいけないという状態になっていることだと思います。

 R:そうですね。労働者にとって被曝をごまかすということは命にかかわることですからね。

 小出:そうです。現場で本当に被曝している労働者は最底辺の労働者でして、彼らは被曝限度に達してしまうと、すぐにクビになってしまって、生活自身を奪われてしまうということになるわけです。例えば東京電力の社員であれば、被曝限度に達すれば別の部署に配置転換になるというだけであって、クビを切られることもないし、生活が脅かされることもありません。けれども、現在本当に苦しい現場で働いている労働者たちは、被曝限度に達してしまうと首を切られてしまいます。そして、今度は生活ができなくなるということになってしまうわけで、自分から被曝量をごまかして、被曝限度にまだ達していないという状態にしなければならなくなってしまっているわけです。本当に厳しい労働なのだと私は思います。

R:こういうことが繰り返されないためには、過酷な現場であるからこそ、しっかりと労働環境の整備をすることが必要だと思います。それから私たちも注視していることを発信し、作業員の方のケアを十分にしていくようにすることが必要ですよね。

小出:そうです。おっしゃる通りで、まずは労働者が被曝するような条件をなるべく減らすという、労働現場の管理ということが一番大切なわけです。被曝限度に達してしまった労働者の生活をどうするかということを考えることも、また、とても大切なことだと思います。

小出裕章さんに聞く 原発問題

★新着記事