住民を対象にした政治学習や講演会は頻繁に行われる。写真は、秘密裏に撮影した金正恩氏偶像化宣伝のための政治学習の様子。2013年8月北部地域で「ミンドゥルレ」撮影。(アジアプレス)
住民を対象にした政治学習や講演会は頻繁に行われる。写真は、秘密裏に撮影した金正恩氏偶像化宣伝のための政治学習の様子。2013年8月北部地域で「ミンドゥルレ」撮影。(アジアプレス)

保衛部講演を聞いた住民たちの反応はどうだったのか。リ・ジュンヒョク氏は
「朝鮮に現在住んでいる<キム・ヨンナム>の弟は、永生塔爆破指示があった時に自発的に保衛部に申告して賞賛を受けたのだそうだ。その家族を3代に渡って絶滅させるなんてことがあっていいのかと批判的だ。しかし一方で、家族中に脱北して(韓国に)渡った者がいる人々は恐怖を感じている」
と現地の恐怖の空気を伝えた。

講演が実施された地域についてリ・ジュンヒョク氏は、古茂山などの他の地域でも講演が行われたと聞いたとして、
「おそらく咸鏡北道全体か、あるいは国境地域全体の住民を対象にしたのではないか」と、広範囲で行われたものと推測している。

2012年7月、脱北して韓国入りした後、再び北朝鮮に戻ったジョン・ヨンチョルの陳述を基に、北朝鮮当局は「ドンカモ」と呼ばれる組織の存在を盛んに宣伝してきた。これは「金日成・金正日の銅像をつぶす会」のことで、この組織が韓米両国によって操縦されていると非難を強めたことがあった。

韓国で調査した結果、「ドンカモ」事件が実際にあったのかは疑わしく、<キム・ヨンナム>という脱北者の存在についても確認できなかった。

今回の保衛部の講演で「脱北者の家族は3 代まで絶滅」という無茶を言い出したのは、北朝鮮に残る脱北者の家族を脅して、外部との連絡、連携を遮断しようとすることが意図だと思われる。

国際社会が北朝鮮の人権状況を問題と注視している中で、公開された住民対象の会議においてで「3代まで絶滅」を云々したのは、まさに金正恩体制の深刻な人権実態を示す事例だといえる。

※アジアプレスでは、中国キャリアの携帯電話を北朝鮮内部に投入して連絡を取り合っている。

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