試合が終わった後、北朝鮮側の応援席がどう反応するか気になった。総連中心の応援団は、敗退にがっかりするより「よく闘ったよ」と大きな声をかけ、全員が起立して拍手で選手たちの健闘をねぎらってあげていた。
一方、疲れきった様子の北朝鮮の選手たちは、頭を垂れたままベンチの方に歩いて行った。キム監督は選手たちに向かって、早く入って来いと手招きをしている。試合に負けたことにひどく怒っているように見えた。
日本チームに勝つだろうと期待した私は、北朝鮮チームの敗北に少しがっかりした。五輪出場を逃した後の消化試合だったけれど、母国から来た選手の試合を直接見ることができてよかったと思う一方、帰宅するまでの間、なぜだかずっと気持ちが悶々としたままだった。それが母国に対する深い愛着ゆえのことなのか、自分でもわからない。
私の祖国に対する愛は、北朝鮮政権が宣伝する「金日成(キム・イルソン)祖国」や「金日成(キム・イルソン)民族」として表現されるイデオロギー漬けの祖国に対してではない。先祖の骨が眠り、私が生まれ育った故郷としての祖国に対するものだ。
いつか、また北朝鮮の土を踏むことができるだろうか。このもどかしい気持ちに終わりは来るだろうか。(了)
(文:キム・スンチョル/ 整理:ナム・ジョンハク)
キム・スンチョル(仮名)
在日朝鮮人だった両親が1960年代に帰国事業で北朝鮮に渡る。北朝鮮で出生したキム氏は、脱北後、日本に居住している。
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