伝統の踊りで結婚を祝福するドイツ在住のヤズディ教徒。ISの襲撃で故郷を追われたヤズディ住民はイラク北部のクルド自治区に避難したが、事件後、イスラム教徒への不信感も広がり、欧州を目指す人も少なくない。(4月3日ドイツ北部 撮影玉本英子(アジアプレス)

ヤズディ社会では未婚女性は婚姻まで貞操を守ることが重要視されるが、ヤズディ教徒全体を襲った未曾有の悲劇に、拉致女性を偏見なく受け入れるようコミュニティが呼びかけていた。「彼女たちは被害者であることを理解するべき」と声が広がり、ドイツでの合同の結婚式へとつながった。新婦は「私を受け入れてくれたことに感謝している。早くドイツ語を覚えて幸せな家庭を築きたい」と笑顔を見せた。披露宴には1000人以上のヤズディ教徒らが出席し、伝統舞踊や歌などで新郎新婦たちの新たな門出を祝った。(ドイツ北部 玉本英子)】

※ヤズディ教(ヤジディ教)
ゾロアスター教の流れをくむといわれるが、イスラム教やキリスト教の影響も受けている。イラク、シリア、トルコなどにまたがる地域に暮らす。イラクには最も多く、およそ60万人が暮らし、クルド語を話す。フセイン政権下では迫害され、イラク戦争後はイスラム武装勢力から「邪教」として狙われてきた。2014年8月、ISはヤズディ居住地域のシンジャル一帯を襲撃、イスラム教への改宗を拒んだ男性たちを集団虐殺したうえ、女性や子どもは「戦利品・奴隷」としてIS地域に移送した。女性は戦闘員と結婚させられ、子どもは軍事訓練施設に入れられるなどしている。現在も1000人以上がIS支配地域に監禁されている。ヤジディ教、エズディ教とも表記される。ISによるヤズディ住民襲撃事件を受け、ドイツ政府は拉致されたヤズディの女性や子どもたち1100人を受け入れ、生活支援のほか、2年間にわたるメンタルケアのプログラムを実施している。

◆第1部「ヤズディ(ヤジディ)の習俗、文化、迫害の歴史」(1~7)一覧
◆第2部「イスラム国侵攻後のヤズディ居住地現地取材と女性拉致被害」(1~7) 一覧

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