美浜原発1号機は日本で最初の商業用原発として、1970年の大阪万博に合わせて稼働された発電所である。40年が経過したため1、2号機の廃炉は決定したが、3号機については40年の寿命を超えて20年延長できるように関西電力は原子力規制委員会に申請した。この20年延長の問題について、元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)
◆誰も安全を保障できない
ラジオフォーラム(以下R):原発の運転期間は原則 40年間と定められているのに、規制委員会が認めれば1回に限り20年間延長できるということですが、本当に大丈夫なのでしょうか。
小出:大丈夫かと聞かれてしまえば、大丈夫でないとお答えするしかありません。私はもともと、原子力発電所というのは機械であって、壊れない機械はない。そして、運転しているのが人間で、人間は神ではないので、必ず間違いを犯す。原子力発電所にしても大きな事故を起こす可能性は必ずあると訴えてきました。大きな事故が起きる前に原子力発電所を止めたいと思ってきたのですが、残念ながら福島第一原子力発電所の事故が起きてしまいました。
それまでも原子力発電所というのは、厳重な安全審査をして安全性を確認して運転が認められたのだから大きな事故などは決して起きないと言われてきたにもかかわらず、福島第一原子力発電所の事故が起きてしまいました。その事故は未だに継続しているわけですし、事故現場に行くことすらできない。どんな原因で壊れたのかすら確定できないという状態なのであって、それができないならば、新たに原子力発電所を運転するなどということは初めから論外だと私は思ってきました。
しかし、残念ながら原子力を進めてきた人たちは、新しい規制基準をつくって、それに合致しさえすればもういいと言い出したわけです。ところが、新しい基準を作った原子力規制委員会の田中俊一委員長自身が、「新しい基準に合致したからといって安全だとは申し上げない」と言っているわけですから、到底安全である保証などないのです。特に、美浜原子力発電所は、すでに当初予定していた40年という寿命がもう来てしまうわけですから、その原子炉を再稼働させるというようなことは、私から見れば全く馬鹿げたことだし、こんな愚かな選択はあり得ないと思います。
R:美浜原発3号機は、2004年8月に配管の破断で蒸気が噴出して、11人の死傷者を出すという大変な事故を起こしています。
小出:そうです。管理も全くできていない状態で、熱水が流れているパイプがいつの間にか薄くなってしまって突然破れてしまい、そこで作業をしていた人たちが、熱湯を浴びて焼け死んでしまうというような事故を起こしました。本当に原子力発電所というのは油断も隙もない、どこかでちょっとした油断があれば、それが大事故につながってしまうというものですから、特に寿命が尽きた原子炉というのはその段階で諦めるというのが、本当の選択だろうと私は思います。
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