自民党が「災害対策」を口実に憲法への導入を目指す「国家緊急権」=「緊急事態条項」について、「政府に権力を集中させ、人権を過度に制約するもの」と強く非難する永井幸寿弁護士(兵庫弁護士会)(撮影:栗原桂子)
自民党が「災害対策」を口実に憲法への導入を目指す「国家緊急権」=「緊急事態条項」について、「政府に権力を集中させ、人権を過度に制約するもの」と強く非難する永井幸寿弁護士(兵庫弁護士会)(撮影:栗原桂子)

自民党は改憲について、世論の理解を得やすい項目から着手するという戦略を描く。その突破口と目されるのが、「国家緊急権」=「緊急事態条項」の導入だ。「大規模災害に対応するため」だというが、本当にそうなのか。『憲法に緊急事態条項は必要か』(岩波ブックレット)の近著がある永井幸寿弁護士(兵庫弁護士会)に話を聞き、問題点を指摘してもらった。(栗原佳子/新聞うずみ火)

ナチスドイツの「前例」

国家緊急権とは戦争、内乱、恐慌、大規模な自然災害等などの非常事態において、国家権力が国家の存立を維持するため、立憲的な憲法秩序を一時停止して非常措置を取る権限。それを明文化したものが「緊急事態条項」だ。

自民党が2012年に発表した改憲草案の第九章に規定されている。永井弁護士は「『お試し改憲』どころか、それ自体が極めて危険」と警鐘を鳴らす。

「国家緊急権の大きな特徴は、国民よりも国家が重要だということ。国家権力を立法、行政、司法に分けて相互に牽制している『権力分立』を停止して政府へ権力を過度に集中し、人権を強く制約する危険な制度です。歴史的にも多くの国で、野心的な軍人や政治家に濫用されてきた経緯があります」

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