◆総理大臣に強大な権力
それでも、東日本大震災は私たちの記憶に新しく、首都直下地震や南海トラフ巨大地震も必ず起こるとされている。「災害に必要」という言葉に説得力があるのも事実だろう。
「災害を改憲のダシにするな。宮城県の被災者がこう憤っていました。本当に被災者を馬鹿にしています。災害と緊急事態条項は関係ないんですから」と永井弁護士は怒りを込める。すでに、東北の被災3県、阪神大震災を体験した兵庫県、新潟中越地震の新潟県を含む17弁護士会は、緊急事態条項創設反対の声明を出している。
「災害で必要なのは現地の自治体に強い権限を持たせること。国は後方支援に回るべきです。国家緊急権は強大な権力を総理大臣に与えますが、国のトップの個人的資質によって大きく左右されます。そのような制度を作ってはいけないのです」
なお、テロも「必要論」の理由とされるが、永井弁護士は「テロは犯罪...
なお、テロも「必要論」の理由とされるが、永井弁護士は「テロは犯罪。国家緊急権が発動される『非常事態』ではありません。法律によって警察が対処すべきことです」と述べる。多くの国が国家緊急権を導入しているという意見についても、「国家緊急権はその国の歴史や法制度に密接に関わっているのだから、数ではなく内容を検討すべき」と一蹴する。
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