今や、米国大統領選挙の主役となっているドナルド・トランプ候補が、日本の「安保ただ乗り論」を振りかざしたことで、日本の在日米軍に対する駐留経費がに わかに注目を集めている。実は日本は年間2000億円規模、累計総額で4兆円を超える巨額な負担を行っている。(鈴木祐太)
トランプ候補は4月27日に首都ワシントンで行った外交政策に関する演説で、在日米軍の駐留経費を日本側が負担をしない限り、在日米軍は撤退させるとの考えを強調した。
しかし、多くの識者が指摘するように、日本ほど駐留米軍の経費を負担している国は他にない。これはいわゆる「おもいやり予算」と呼ばれ、1978 年、当時防衛庁長官だった故金丸信元議員(自民党)の主導で始まったとされる。巨大な貿易赤字と財政赤字で厳しい状況にあったアメリカ政府を支援するため として支出が決められたものだ。
防衛省の数字を見ると、最初の年の1977年度が62億円。数字で確認できる最も直近の2015年度で1899億円。最も高額となったのは1999年度で、2756億円が支払われている。2015年度までの累計で4兆7066億円もの駐留経費支出されている。
単年度2000億円というのは、税収難に苦しむ日本にとって、けっして小さいものではない。例えば、安倍政権は2015年度介護報酬を2.27%引 き下げた。これによって介護費用を2300億円程度抑制する効果が期待されているわけだが、思いやり予算をこうした分野に回すことができれば、人材不足に 悩む介護の職場に影響を及ぼす必要はなかったはずだ。
在日米軍が日本防衛だけのために存在しているものではないことは、米軍関係者の誰もが否定していない。在日米軍はハワイにある太平洋軍司令部の指揮 下にあり、インド洋までを含む広範な地域で軍事活動を行っているのであって、それを日本が財政的に支えている構図だ。トランプ氏の指摘がまつたくの的外れ であることは米国の保守系シンクタンクからも指摘されている。
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