◆政権による食糧の確保
「優先配給対象」に対する配給システムを維持するためには、当然国家が食糧を調達しなければならない。その方法は主に次の通りだ。
1協同農場の生産からの上納分
2各企業所や機関が耕作する田畑の生産分
3軍や警察などの権力機関が持つ副業地と呼ばれる田畑の生産分
4輸入
5国際社会からの援助

北朝鮮政権が国際社会から食糧援助を受けているのは、1~4によっては「優先配給対象」に供給する食糧が確保できていないからである。「優先配給対象」に与えられる配給食糧は「国家保有食糧」である。一方、市場などで売られているのは「民間保有食糧」である。前者は安い国定価格で配給され、後者は市場価格で流通している。

国家権力といえども、市場で売られている「民間保有食糧」を強奪することはできないので、しばしば生産者たる農民が収奪の標的になってきた。北朝鮮政府が度々言及する「食糧問題の解決」とは、この「国家保有食糧」の不足を意味するものと考えるべきだろう。(続く)
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※北朝鮮の人口は約2489.5万人(2013年国連経済社会局人口部)という推定値があるが、正確には不明。90年代の餓死発生を隠すために北朝鮮当局が過大申告している可能性が高いというのが筆者の見解。
※参考 2012度の中国から穀物輸入額は139,276 千ドル(前年比+10.9%) (KOTRA)
※各種拘禁施設で収容者によって生産される農産物も相当な量になると思われる。一例は平安南道の甑山(ジュンサン)教化所。ここは保安部(警察)が管轄しており、収容者推定7000人が農作業に従事させられている。生産物は保安員の配給に回されたり市場に販売されたりしている。(「北朝鮮内部からの通信リムジンガン」第4号『脱北難民は北朝鮮送還後どのように扱われるか』2010年3月)

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