「職場離脱者」については説明が必要だろう。
現在、北朝鮮の工場・企業所の大部分は、90年代来の経済難で正常に稼働していない。労働者たちには、まともに給料も食糧配給も出なくなった。そのため、この20年間、食べていくために職場を離脱する人が大量に出た。
と いっても、国家による職場配置が原則の北朝鮮では、個人の好みで条件のいい職場に移れるわけではない。多くの人は商売や、荷役、建設現場などでの力仕事や 運送業をしたりして、収入を得るようになった。生きていくために国家のくびきから、離れ自由で自立した経済活動を始めたのだ。
ところが、この「職場離脱」行為に金正恩政権はめっぽう厳しい。何も生産活動を行っていなくとも、職場は国民統制の要であるため、勝手な離脱は罪とみなすのだ。
金日成時代以来、政権は職場を通して国民の思想と行動を統制してきた。政治学習や思想検討集会、奉仕労働などへの動員も職場単位で行う。ゆえに、「職場離脱」は独裁政治の基盤を壊すものとして敵視されてきた。
そ れでも、金を払って職場に籍だけ置いて「暇を買う」という行為が横行していたのだが、金正恩政権は、取締りを徹底し始めた。この度の内部からの報告で明ら かになったのは、拘束した「職場離脱」者を、農場に作った臨時の収容所に投入して、強制労働をさせているという新しい事実だ。
権力者が決めた職場で働かせることを強い、それに不服従する者を拘束して強制労働に駆り立てる制度…これを奴隷労働と言わずしてなんと呼べるだろうか?(続く)
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