◆強制動員で衰弱する者が続出

ある協同農場の近くに住む取材協力者は、彼らの悲惨な境遇を次のように伝えてきた。

「協 同農場に送られてきた『職場離脱者』たちは、天幕で寝泊まりしながら日中は草刈りなどの農作業をさせられている。彼らの監視は、本来は警察の仕事なのだ が、除隊軍人の党員たちにやらせている。軍隊式に中隊、小隊に編成し、1人でも逃走するとその隊全体が罰を受ける仕組みになっているため、逃げる者はほと んどいないようだ。作業の能率を上げるため、小隊別に競争をさせて負けた小隊には追加の作業をさせている」。

互いに牽制、競争させるやり方によって、草刈りなどの重労働の作業がはかどったため、受け入れた協同農場では強制動員を重宝しているという。その「成果」に気を良くした咸鏡北道の行政府は、捕えた「職場離脱者」の農村への動員を拡大させる方針なのだという。胸が痛む話だ。

農作業の合間に行われる政治学習では金正恩氏の偉大性ばかりが強調された。2013年7月
農作業の合間に行われる政治学習では金正恩氏の偉大性ばかりが強調された。2013年7月

 

働かされている「職場離脱者」たちは大丈夫なのだろうか?

「過重労働をさせているため衰弱する者が続出している。また農場近くの地区では物盗りが横行し、農場員たちは『昼は仕事をしてくれるからいいが、夜は怖い』と言っている」
と取材協力者は言う。食事が足りず盗みに走る者が出ているのだ。
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