◆町にいれば恐怖支配、脱出できても過酷な難民生活
2014年12月、トルコ・スルチの村に並んでいたたくさんのテント。シリアから逃れてきたクルド人住民が、親族のもとに身を寄せていた。村のすぐ先の国境線を越えたシリア・コバニでは、過激組織「イスラム国」(IS)とクルド組織・人民防衛隊(YPG)とが激しく戦い、砲弾が着弾する轟音が響き渡る。
「自分たちは脱出できたが、ISに町を制圧され、逃げ出せない住民は恐怖に怯えている」
避難してきた老人はそう言った。
当時、シリア北西部のマンビジから逃れてきたばかりだった公務員のベカル・アハメッドさん(33歳)は、ISは広場で公開処刑を繰り返していたと話した。クルド組織のスパイとされた男性は、大鉈(おおなた)で斬首され、死体は3日間、木にくくりつけられ晒された。チュニジアやモロッコからの戦闘員が我が物顔で歩き回っていたのが異様だったという。
◆外国人男児をIS思想で教育
一方で、ISはマンビジを含む支配地域の市民生活の様子を紹介する宣伝写真や動画を、ネットで公開している。そこに映るのは、彼らが「理想」とする統治のもと、平和に暮らす市民の姿や、楽しそうに授業を受ける小学生たちの姿だ。そのなかにはウイグル人など中央アジア系の子どもたちも登場する。戦闘員志願者とともにシリアに家族で「移住」してきた外国人の子どもたちを集めた施設とみられる。男児は「小さな獅子」と呼ばれ、将来の戦闘員として教育され、「戦って死ぬことは名誉の殉教」と教え込まれる。
次のページ:劣勢のIS、包囲されるマンビジの町...
1 2