東京電力福島第一原子力発電所の事故で、全村避難の指示が出た飯舘村。古居みずえ監督は仮設住宅に暮らす菅野榮子さん(80)と菅野芳子さん(79)にカメラを向けた。2人は仮設住宅そばで畑を耕し、野菜を育てる。村に伝わる食文化に触れながら、彼女たちに寄り添うほど、故郷を追われた悲しみが伝わってきたと古居監督は話す。(アジアプレス・ネットワーク編集部)

映画「飯舘村の母ちゃんたち 土とともに」を制作した古居みずえ監督。原発事故の全村避難で飯舘村を離れることになった女性二人にカメラを向け続けた。
映画「飯舘村の母ちゃんたち 土とともに」を制作した古居みずえ監督。原発事故の全村避難で飯舘村を離れることになった女性二人にカメラを向け続けた。

◆飯舘村の食文化に触れて

榮子さんと芳子さんの日常生活を追う中で印象に残ったことは、食生活の豊かさでした。二人は仮設近くで野菜を育て、いろんな料理をつくっていました。おこわをおにぎりにしてくれたこともありましたし、畑でとれた新鮮なきゅうりを、彼女たちが作った甘い味噌につけて食べた時の美味しさは忘れられません。

榮子さんたちは、味噌、凍み餅(しみもち)など、飯舘村の伝統の食文化を伝えようと、一般の人たちに向けたワークショップを各地で開いていました。美しい村へ連れていくことはできないが、せめて故郷の味だけでも知ってほしいという榮子さんの気持ちが溢れていました。
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