ラカイン州のパゴダ(仏塔)の僧侶(2010年撮影 宇田有三)
ラカイン州のパゴダ(仏塔)の僧侶(2010年撮影 宇田有三)

<特別連載>ミャンマーのロヒンギャ問題(1)へ

Q. ミャンマーは、日本と同じ仏教国と聞いていますが。
A.
 その通りです。ビルマは敬虔な仏教国です。でもその仏教は「上座仏教」で、日本の「大乗仏教」とは異なっています。

Q. 同じ「仏教」という名前がついているのに異なる仏教なのですか?
A.
 かなり大ざっぱにいえば、阿弥陀如来や観音菩薩など、外部に救済者を認める(求める)日本の大乗仏教と「絶対神を信仰する一神教」のキリスト教やイスラーム教を一つのグループとすれば、その対極にあるのが上座仏教です。上座仏教は外部に超越的な存在を認めません。

おおざっぱにいうと、<イスラーム、キリスト教、大乗仏教>に対して<上座仏教> という枠組みになります。(詳細は佐々木閑『犀の角たち』を参照)

Q. 日本の映画にもビルマのお坊さんの話があったような気がします。
A..アジア・太平洋戦争時にミャンマー(ビルマ)侵攻した日本軍兵士の話ですね。竹山
道雄さんの『ビルマの竪琴』という小説です。この小説は何度か映画化もされています。実は、この小説と映画が有名になったことで、ミャンマー(ビルマ)の仏教が誤解された原因ともなりました。『ビルマの竪琴』は作り話です。ドイツ文学者であった竹山さん自身が次のように説明しています。

《『ビルマの竪琴』は「空想の産物です。モデルはありません」「私はビルマに行った
ことがありません。いままでこの国に関心も知識もなく」「何も知らないでかいたのです
から、まちがっている方が当然なくらいです」》
この誤解をもとにして、さらに不正確な説明がされることもあります。すなわち、『ビ
ルマの竪琴』が作り話だと知っているビルマ通の人が、次のように解説するのです。
《『ビルマの竪琴』は創作物です。ビルマは上座仏教ですので、僧侶が琴を奏でたり、
鸚哥(インコ)を飼ったりすることはありません」と》

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