Q. ミャンマーではムスリムを簡単に「ミャンマー・ムスリム=ミャンマー人」とは呼べないのですね。
A.
 呼べません。

Q. それはまた、どうしてですか?
A.
 それは、ミャンマー国内には大きく6つの異なるムスリムが存在しているからです。

Q. スンナ派、シーア派という区別ではないのですか?
A.
 スンナ派とシーア派は、イスラームの預言者の後継者をめぐる正統性に違いがあり、教義も少々異なります。私の説明する違いとは、ミャンマーには6つの異なるムスリムがいるということです。出自の違いです。

Q. どのようなものがあるのですか?
A.
 大まかに分けると、6つの異なる呼び方のムスリムが暮らしています。

(1)インド/パキスタン系の「インド・ムスリム」
(2)ミャンマーに土着化した「ミャンマー・ムスリム」
(3)中国系の「パンディー・ムスリム」
(4)マレー系の「パシュー・ムスリム」
(5)中東の子孫である「カマン・ムスリム」
(6)バングラデシュからの「ロヒンギャ・ムスリム(ベンガル系)」のです。

Q. 「ミャンマー・ムスリム」といっても、具体的にどのムスリムかはわからないのですね。
A. 
イスラームを信奉しているのは共通ですが、それぞれに特色があります。

例えば、パンディー・ムスリムは土地柄からいって中部の大都市マンダレーを基盤にしており、中国系のムスリムなので、モスクの外側に漢字が掲げられています。

1868年に建てられたマンダレーの「清真寺」(モスク)。アラビア語、中国語、ビルマ語が並ぶ。(撮影・宇田有三)
1868年に建てられたマンダレーの「清真寺」(モスク)。アラビア語、中国語、ビルマ語が並ぶ。(撮影・宇田有三)

 

(2)のミャンマー(バーマ)・ムスリムは、イスラームを信奉している以外に、ミャンマー文化を受け入れ、ビルマ語を話すところからもっとも土着化していると考えられます。

ですから「ミャンマー・ムスリム=ミャンマー人」とするならば、(2)のミャンマー・ムスリムが最も適当だと思えます。でも、人口が一番多いのは(1)のインド/パキスタン系ムスリムで、次が(6)ロヒンギャ・ムスリムという順番になりますので、ミャンマーのムスリムの多さから、「ミャンマー・ムスリム=ミャンマー人」とはならないのです。

またロヒンギャ・ムスリムの人びとの主要母語はミャンマー語ではなくベンガル語(特殊なチッタゴン方言)ですので、土着化したとも言い難いのです。(つづく)
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