北朝鮮の深刻な経済難の最大の犠牲者は子供と老人であった。多くの老人の死を目撃した私は、北朝鮮の保健、医療など高齢者への福祉制度が、宣伝だけは立派だがまったく有名無実になってしまったことを知っている。労働力として役に立たない老人は、国からも、そして社会と家庭からも扶養することが重荷だと扱われ、見捨てられている。(ペク・チャンリョン)
2013年春、北部の国境地域のある都市で、みすぼらしい身なりで歩きながら涙を流している老女がいた。撮影者が尋ねた。
撮影者:あばあさん、自宅はこの辺りですか?
あばあさん:ここで暮らしているけれど、家は無いのよ。
撮影者:家がないなんて、どこで寝ているんですか?
あばあさん:夜には人民班の警備をしていて、警備室(守衛室)で寝ているのよ。
撮影者:あばあさんは、配給をもらっていますか?
あばあさん:どうして配給なんかもらえるでしょうか…。
北朝鮮にも、一応国家運営の老人福祉施設がある。しかし、「出身成分」を重視する北朝鮮社会の特性上、施設に入るのは、抗日闘争や朝鮮戦争参加者などの革命闘士ら、政治的核心階層が最優先である。一般の老人たちには福祉施設など存在しないも同様だ。扶養してくれる家族がいない老人は、生存していくために、老体に鞭打って路上に出て自ら生活費を稼がなければならない。
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