軍隊が副業で車両を貸し出して運営する乗合トラック。「サービ車」と呼ばれる。燃料の値上がりで5月ごろから運賃が上がった。2008年8月平壌市郊外にてチャン・ジョンギル撮影(アジアプレス)
軍隊が副業で車両を貸し出して運営する乗合トラック。「サービ車」と呼ばれる。燃料の値上がりで5月ごろから運賃が上がった。2008年8月平壌市郊外にてチャン・ジョンギル撮影(アジアプレス)

 

◆ガソリン、軽油(ディーゼル油)
前回の調査の5月中旬と比べるとガソリンは横ばい、軽油は50%も上昇しているが、3月の経済制裁実施後は上下動が激しく、軽油も一時大幅に下落していたので、今回の上昇が制裁の影響によるものか判然としない。国際油価格自体が安値で安定していることもあってか、上昇しているとはいえ、ガソリン、軽油の価格が高騰しているわけではない。

ガソリンと軽油は全量輸入であるが制裁対象品ではない(航空燃料は制限付きの制裁対象)。 これら燃料の輸入は、①軍や警察、党などの公的な機関と一部の重要国営工場向けの国家計画に基づく供給向け ②国内市場向けに分けられる。しかし①から横流しされた燃料が、20年ほど前から市場で大量に流通しているのが実情だ。各都市には燃料を扱う会社や卸商人がいる。

◆中国元実勢レートは安定
筆者がもっとも注目しているのは中国元の実勢レートの動きである。この2年間ほど、北朝鮮の対中国元、対米ドルの実勢レートは極めて安定していた。天然資源等の対中国輸出が好調であったことなど、外貨収入が伸びたためだと思われる。

北朝鮮の外貨の稼ぎ頭は、ずっと石炭と鉄鉱石など鉱物資源の対中国輸出であった。経済制裁によって石炭輸出に制限がかかったこと(民生用のための輸出は除外)、国際資源価格の下落、開城工業団地の閉鎖、海外への労働者派遣業務と食堂経営の縮小などから、今後、北朝鮮の外貨収入が減少していくのは間違いないと見られるが、これが朝鮮ウォンの下落に、いつ、どのように影響していくのか注目である。

大韓貿易投資振興公社が6月15日に発表した「2015年の北朝鮮対外貿易動向」によると、石炭は輸出物量が前年より26.9%増えたが、価格の下落で輸出金額は逆に7.6%減少している。
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