市場で売られている雑貨、衣料などの工業品はほとんど中国製だ。人民元や米ドルが流通している。2011年6月平壌市のモラン市場にてク・グァンホ撮影(アジアプレス)
市場で売られている雑貨、衣料などの工業品はほとんど中国製だ。人民元や米ドルが流通している。2011年6月平壌市のモラン市場にてク・グァンホ撮影(アジアプレス)

 

◆中国製品の価格が大幅上昇
北朝鮮住民への聞き取りで共通していたのは、中国製工業品の値上がりである。調査したのは衣類や靴、布地、雑貨などの日用品で、北朝鮮への輸出に制限がかけられた品目ではない。

中国製品の価格上昇の理由について複数の取材協力者は、「市場の商人たちに訊くと『羅先、恵山、新義州に入って来る中国工業品が大きく減少したからだ』と説明する」という。詳細な貿易統計速報があるわけではないので、現時点で輸入自体が減っているのかわからない。

4~5月の調査時点でも中国工業品の価格が上昇したとの声が多く聞かれたが、この時は北朝鮮内の商売人による売り惜しみが原因だという評価が多かった。また、中国税関が北朝鮮向け輸出品の検査を厳格化したため、手間と時間がかかっていることの影響があるのかもしれない。

4月と比較可能な品目を記しておく。購買力の低い北朝鮮の市場に並ぶ中国製品は、低質で廉価な物が多いが、かなり高いという印象を持つ。調べた場所は中国にほど近い咸鏡北道A市で、全国的にも中国製品の値段が安い地域である。(数値はいずれも中国元。1元は約16円)

  4月中旬 7月中旬
子供用長靴 85 80
女性用長靴 73 100
男性用長靴 77 120
子供用運動着 27~50 60~80
男性用ジャンパー 115~154 170~220

この他、北部地域の市場で7月中旬に調べた中国工業品のうち、相場のわかりやすい品目の価格をあげておく。

洗濯洗剤 200g入り7~9
400g入り15
石鹸1個 3~5
ランニングシャツ 15

◆外貨稼ぎ会社に打撃との情報
物価調査を担う取材協力者の一人B氏は、次のようにコメントしてくれた。

「現在のところ、経済制裁でジャンマダン(市場)に大きな打撃は生じていないけれど、値段の上下の幅が大きくなって『怖いな』と感じることがある。住民たちは配給もない中、自力で経済活動をして食べてきたので、長く続いた『封鎖』に耐性ができた。ただ米価が(現在の2倍の)1万ウォンになったら住民の動揺は大きいだろう。また、多くの『外貨稼ぎ会社』が輸出不振で痛手を被っていて、潰れた所もあると聞く」

「外貨稼ぎ会社」の具体的な動向については現在調査中である。次回に詳細を報告する。(続く)
<北朝鮮内部>経済制裁は効いているか? 記事一覧

※北朝鮮制裁決議「2270」の主な内容
(1)北朝鮮への航空燃料(ロケット燃料含む)の輸出禁止(例外あり)
(2)北朝鮮からの石炭や鉱物資源の輸入禁止(例外あり)
(3)北朝鮮に出入りする貨物の検査の強化
(4)安保理決議違反が疑われる全船舶の寄港禁止
(5)金融制裁を強化
(6)渡航禁止や資産凍結の対象となる個人、組織を増やす

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