北朝鮮の慢性的な経済難は、あらゆる住民に甚大な苦痛を与えてきたが、その中でも最大の犠牲者は子供と老人である。特に90年代に発生した大飢饉の時期、多くの老人が餓死するのを筆者は目撃した。食糧配給が途絶えると、働ける人は商売に出かけたり自分の労働力を売ったりしたが、多くの老人たちは、なす術なく死を待つだけだった。金正恩政権は「国際高齢者デー」の記念行事を行うなどして、老人福祉政策の充実について宣伝してきた。しかし、実際には貧困層の老人は、最近も最悪の生活難に苦しんでいる。老人の悲惨な現実を写真で紹介する。(ペク・チャンリョン)
◆家を追い出された彷徨う老婆
2011年1月、平壌市郊外の道路。杖を突きながら、厚着をした一人のおばあさんが歩いて来た。撮影者が声をかけたところ、息子に家を追い出されたと言う。
撮影者:あばあさん、年はおいくつですか?
老婆:80。
撮影者:子供はいないんですか?
老婆:3年前にトウモロコシ700kgを持って行って息子と同居を始めたけれど、(トウモロコシがなくなったので)追い出されてしまった。
撮影者:息子に追い出されたんですか?
あばあさん:「出て行け」と言いうのよ。(足が痛くて)歩けない。こんなことになるとは思わなかった。
北朝鮮憲法第72条には、「身寄りのない老人」の無償治療と社会保険による高齢者保護政策が明記されているが、まったく形式に過ぎなくなっている。地方都市には養老施設は見当たらない。
次のページ:畑すきをするために山に来た80過ぎの老人 など他の2枚写真...
1 2