実行犯カイルル・イスラム・パイエルの姉と母。7月7日撮影宮崎紀秀
実行犯カイルル・イスラム・パイエルの姉と母。7月7日撮影宮崎紀秀

 

日本人7人を含め20人が殺害された7月のダッカテロ事件。実行犯の一人カイルルは、2015年に農業指導にあたっていた日本人・星邦夫さん殺害事件で指名手配されていた。バングラのイスラム過激派は日本人を標的にする方針を持っていたのだろうか? 国際ジャーナリスト宮崎紀秀の現地報告の三回目。(アイ・アジア)

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両親にもわからない 息子が過激思想に走った理由

「普通に見えた」少年が何らかの形で、過激派グループとつながりテロの実行犯になっていく。バングラデシュの警察は今回の事件の背後に国内の非合法イスラム過激派組織JMB(ジャマートゥル・ムジャヒディン・バングラデシュ)がいると見ている。

18歳の実行犯ミール・サミー・ムバシールは金もクレジットカードもパスポートも持たずに出て行った。失踪の当日、母親が買ったパンを食べるように促すと、「帰って来てから食べるので、パンは冷蔵庫に入れないで」と答えたという。

冷蔵庫で保存したパンはもともと嫌いだったそうだから特に気にもしなかっただろう。母親にとってはこれが息子と交わした最後の言葉になった。失踪はそのくらい突然だった。両親でさえ我が子が過激思想に傾倒していく理由もプロセスも分からなかった。

 サミーの父、ハヤトとのインタビューの終盤で、私はぶつけてみた。

「彼の内なるものの何が過激主義に走らせたと思いますか?」

「彼は宗教に興味を持っていたし、簡単に人から説得される人間だった。だから操るのは簡単だと思われたのでしょう。でも何が起きたのかはわかりません。ただ日本、インド、イタリアの皆さんに言いたいのは息子のやったことについて申し訳ないということです。その方たちには、何の意味もなさないでしょうが、私としてはどうしても一言、言いたかった。そして息子がまだ18歳だったと知っていただきたかった。それを知れば何かが間違って起きたと分かってもらえるかもしれません」

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