カイルルが通ったイスラム教の神学校マドラサ。ここの同級生に誘われダッカに向かったという。7月7日撮影宮崎紀秀
カイルルが通ったイスラム教の神学校マドラサ。ここの同級生に誘われダッカに向かったという。7月7日撮影宮崎紀秀

 

◆動揺する母「私の息子は愚かです」

他にも息子のものが何か残っていないか尋ねると、母ピアラはカイルルが使っていたベッドに敷いてあった布団をはがして見せてくれた。そしてピンクの蔦のような模様の布を縫い合わせたその薄い布団を胸の前で広げたまま「私が作ってあげました」と言って照れとも悲しみともつかない微笑みを浮かべた。貧しいなりにも愛を注いで育てた息子に何が起きたのか、全く分からず気が動転しているというのが正直なところなのだろう。

実行犯の家族からは、コーランを唱えられない代償を命で払わせるほど息子が異教徒や外国人を激しく敵視するようになった形跡は見られなかった。無辜の人を平気で殺めた彼らの歪んだ思考がどこから生まれたのかは家族にさえ理解できない。

実行犯カイルルの母はインタビューの途中、話しながら痩せた両手を合わせ祈るような仕草をした。後でベンガル語の通訳に尋ねたところ、彼女は方言を交えてこう言っていたそうだ。

「私は決して幸せではありません。息子を失い、他の人たちも息子を失いました。私の息子は愚かです」(終わり)

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