仕分け現場での仕事は週3日、夜8時から翌朝5時までやることになった。弁当の製造工場のアルバイトと合わせると、フーンさんの収入は月20万円を超えた。だが、週6日も夜勤をしていれば勉強に身が入るはずもない。

学校に行くと、留学生の大半は机に突っ伏したままだ。皆、フーンさんと同じように夜勤のアルバイトに明け暮れているからである。それでも教師も全く咎めようとはしない。きちんと学費を納めているかどうかにしか関心がないのである。

フーンさんの日本語学校は、民間の古いアパートを借り上げて寮に使っている。風呂とトイレは共同で、広さは6畳程度。駅からも徒歩で20分ほどかか り、せいぜい月3万円程度の物件だ。そんな部屋にフーンさんは3人で住み、1人月3万円を支払っている。日本語学校がボッタクっているのだ。

「ベトナムに帰りたい…」

フーンさんは泣き出しそうな表情になって訴えてきた。だが、借金を残したまま彼女がベトナムへ戻れば、家族は破産してしまう。彼女には、日本で学費を納めながら「奴隷労働」を続けるしか選択肢はないのである。(3を読む>>)

出井康博氏の新刊
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出井康博 いでい・やすひろ
1965年、岡山県生まれ。ジャーナリスト。英字紙「ニッケイ・ウィークリー」記者などを経てフリー。著書に『松下政経塾とは何か』(新潮新書)、 『長寿大国の虚構—外国人介護士の現場を追う—』(新潮社)など。『ルポ ニッポン絶望工場』(講談社+α新書)を7月21日に上梓。

 

ベトナム戦争40年 映像公開「我が家にやってきた脱走兵」(上)

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