ミッドウエー海戦の戦果を大々的に伝える当時の新聞。だが、元海軍兵の瀧本さんが乗った飛龍はミッドウェー海戦で米軍機の猛攻を受け沈没した。
ミッドウエー海戦の戦果を大々的に伝える当時の新聞。だが、元海軍兵の瀧本さんが乗った飛龍はミッドウェー海戦で米軍機の猛攻を受け沈没した。

トラック島の守備隊4万人のうち2万人が犠牲となった。奇跡的に生還した瀧本さんは生き残った者の責任として、小中高校などで「戦争の語り部」を行っている。
瀧本さんは、「太平洋戦争前の世相」「ミッドウェー海戦の実相」「トラック島駐留」を紹介したあと、自らの考えを語る。押し付けることはない。どう考えるか、自分で考えることが大切だと語りかける。そして、こう締めくくる。
「これから生まれてくる子どもさんの命を守る話です。少しでも心に響くことがあれば、ご家族やお友達に伝えてください」

平和講演の多くは、真夏の体育館で児童・生徒たちに向かって1時間余り。瀧本さんは一度も座ることなく、どんな質問も立ったままで答える。今年で94歳、まさに命を削るような活動である。
その平和講演を、瀧本さんは8月末で止める。理由は二つだという。

一つは、今回の参院選。瀧本さんは「いくら講演活動を続けても何も変わらない。いや、時代はますます悪い方向へ向かっています」と嘆く。
二つ目が、参院選の結果を受け、近い将来、集会の自由が奪われる時代が来るだろうと思うからだ。

「戦争が近づくと、特高警察が700人近くの反戦主義者を次々と検挙していきました。今の政権はそれと似たことをやると思いますよ。当時よりも戦争に反対する人は多いから取り締まりも大掛かりにやるでしょう。平和講演をやっていることで逮捕されたら、息子夫婦に迷惑をかけることになりますからな」

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